第2章 この手が届く距離【日向翔陽】
顔の横に手を置かれる。
こ、これが噂の壁ドンかぁ…。
なんて関心してる場合じゃなかった!!
「優希…。」
「な、なに…ふ、んっ!?」
日向君は艶っぽい声でそう言うと、唇を重ねてきた。
「ひ、ひひひひ日向君っ!?!?」
「…ごめん、急に。我慢できなくなっちゃってさ。でも、これでちゃんと俺のこと意識してくれた?」
日向君はそう言うとなんだか切なそうな顔をした。
「ごめん…1回だけ気持ち伝えていい?これが最初で最後だから…。」
日向君はヘラっと笑って見せた。でも、どこかに辛さを隠している。
「俺、優希が好きだ。友達としてじゃない。1人の女性として。叶わないのはわかってる。でも、俺の気持ちもちゃんと覚えておいてね?」
「叶わないとか、そんなの勝手に決めつけないで!!」
私は咄嗟に叫んでいた。
「最初で最後って何?これからも言ってよ。好きだって…。」
私がそう言うと、日向君は硬直していた。
…やばい。引かれたかな??
でも、私の考えとは裏腹に、日向君はみるみる顔を紅く染め上げていった。
「え、えええええっと…まじで?」
「まじだよ。」
「ゆ、夢じゃない?ほっぺつねって?…いたたた!!!」
「夢じゃないよ」
「じゃ、じゃあ改めて…優希さん。好きです。僕と付き合ってください。」
「もちろんです。お願いします。」
私たちは抱き合った。
「やばい、俺今世界一の幸せものかも…後で罰が当たりそー…」
「そんなこと言ったら私もだよ?お互い様だね♪」
どちらからともなく私たちはキスをした。
彼との距離、0cm。
*この手が届く距離。
手が届くだけじゃない。
心だって、すぐに届く距離にあったんだ。