第9章 相合傘 【西谷夕】
恐る恐る顔を上げると、そこには赤面しているノヤがいた。
「あ、あの…ノヤ?」
「…だろ」
「え?」
「そんなん、お前だけに決まってんだろ…」
不意に抱きしめられ、瞬間、傘が落ちる。
「それに、俺は優しくなんかねぇ。お前が心配っていうのも確かに嘘じゃねぇけど…本当はお前ともっと一緒にいたいっていうのが大きい。」
「俺…お前の期待してるような、優しい男には到底なれっこねぇ。でもな、お前を守りてぇってのはホントだ。」
その言葉に目頭が熱くなる。
「こんな俺だけど…ついてきてくれるか…?」
そんなの、答えは決まってる。
「うん!!」
そう言って私も抱きしめ返す。
「そうだ、お前の我が儘も聞いたことだし、今度は俺の我が儘、聞いてくれるか?」
「…?うん。いいけど…どんな?」
「お前とキスしたい。」
「!?!?!?」
唐突すぎて思考が停止してしまう。
「俺とキスすんの…そんなに嫌か?」
ノヤがしょんぼりした顔でたずねてくる。
「ううん!!そんなことないよ!!」
あわてて否定する。
「そっか。じゃぁ、覚悟はできてるな?」
そう言われ、私は目をぎゅっと瞑る。
数秒後、私の唇に温かいものが落ちてきた。
それは、私のファーストキス―――…。
*相合傘*
君との相合傘は
なんだか特別な空間なんだ