第3章 *ヤキモチ 【及川徹】
「きゃぁぁぁ及川さんかこいいー!!!」
「はぁぁぁ素敵過ぎる!!!」
…朝からうるさいですよ。ちょっとは黙れないんですか。女子軍団。
及川が登校してくるなり、クラス中の女子が騒ぎ出す。
よくもまぁ毎日毎日飽きないですね。
それに及川のやつ、女の子にちやほやされて調子に乗ってやがる。
ほら、今だって笑顔で女の子達に手を振っている。
その姿を見て胸が苦しくなる。
あぁ、痛い。早く治まりやがれ。
私はそう念じながら、見ないふりをした。
「優希ちゃんおっはよー!!」
…せっかく視界に入れないようにしてたのになんてことをしてくれるんだこいつ。
ほら、女子がみんな鬼の形相でこっち見てる。
最近及川は毎日私に声をかけてくる。
及川も空気読めよ。女慣れしてるんだから女の子の気持ちぐらいわかるだろ?だったらほっといてよ。
「あれー?無視すんの?及川さん泣いちゃうよー」
勝手に泣いてろよ。
そんなに構って欲しいなら他の女子のところに行けばいいじゃないか。
「もういいよ。優希ちゃんなんて知らないもんね!!」
無視すると及川はいつもこう言う。でも、毎回そんなことを言いながらずっと私のそばにいてくれる。
…それに安心していたからだろうか。
今日の及川は、あっさりと私の傍を離れていった。
え…
ホントに行っちゃった…
及川が離れて行ったことに寂しさを感じた。
どうしてだろう。
これは私が望んでいたことじゃなかったの?
私は及川に話しかけられて迷惑だったんじゃないの?
自分の気持ちがだんだんわからなくなってきた。