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強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙

第1章 最強の男




帰って欲しくない気持ちと、私を困らせるのも嫌な気持ちとの葛藤で、ボロボロと涙を零す稜流。

「万次郎さんがいいなら……晩御飯……食べてけば?」

声のする方を見ると、昴流が目線を逸らしながら呟く。

少し恥ずかしそうにしているけど、昴流の言葉に稜流の表情が明るくなる。

佐野君が稜流を抱っこしながら、私を見た。

「佐野君のお家が大丈夫なら、食べていく?」

「急に人数増えていいのか?」

「うん、それは大丈夫だよ」

そんなこんなで、佐野君が晩御飯を食べて帰る流れになったのだった。

とりあえず、置きっ放しにしてあるバイクが気になるから、取りに行って貰っている間に、晩御飯の支度をし始める。

すぐに戻って来た佐野君が、弟達とゲームをしている。

今日学校で作って食べてもらったとはいえ、家に彼がいるのが妙に緊張する。

背後で弟達と同じようなテンションで盛り上がる佐野君を、チラっと見ては少し笑ったのは内緒だ。

「よし。出来たよー。みんな、手洗ってー」

「「「はーい」」」

声を揃えて返事をして、三人が手洗いをして戻って来る。

佐野君が一人増えただけで、食卓が賑やかだ。

「おおーっ! ハンバーグっ! すげぇー、目玉焼き乗ってんじゃんっ!」

「まんじろー、子供みたーい」

「ねーちゃんのハンバーグは、世界一なんだぜっ!」

完全に打ち解けたみたいで、三人が仲良さそうに騒ぐ。

楽しそうにしている弟達を見ていると、いつも寂しい思いをさせているから嬉しくなる。

佐野君には感謝してもしきれないな。

ご飯を食べた後も、少しの間佐野君がいてくれたおかげで、色々助かってしまった。

遅くまでいてくれて、弟達が寝た後、ソファーに座る佐野君に飲み物を渡す。

「お風呂まで入れてもらって、本当にごめんね。すっかり佐野君に懐いちゃったみたいで」

「いーや、俺も楽しかったからいーよ」

相変わらず人懐っこい笑顔で笑う佐野君は、一緒にいればいるほど不良というイメージが結びつかない。

お風呂上がりで、まだしっかり乾いていない髪が気になる。

ドライヤーを持って来て、

「佐野君、ちょっとごめんね」

柔らかい髪に指を通して、タオルで水気を吸い取るように撫でる。

「おっ、乾かしてくれんの?」
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