第1章 ニートと黒猫
「お前はクロな」
名前を決めるというのは苦手だ。
そういう訳ですぐ決めた、在り来たりな名前を付けてやった。
すると黒猫のクロは なー、と返事をする様に鳴いた。
「..なんだ、こんな名前でもいいのか?優しい奴だ」
リビングで座っている俺を、
俺の膝の上から見上げるクロ。
黒猫でも不気味さは無く、寧ろ癒される容姿をしていた。
思わず頬が緩む。
久々に動物と触れ合うとなんて可愛く感じるんだ。
嗚呼..癒され
『気持ち悪い』
…
?はて、何か聞こえた様な..?
するとクロはすとん、と俺の膝から床に降りた。
そして俺の事を見上げると、
『お前、気持ち悪い』
..まさか。
そんな事有り得ない。
俺はクロを凝視した。
『なんだ。ジロジロ見て、気持ち悪い』
「それ三回目なんですけど!?」
耐え切れずソファーから勢いよく立ち上がり、
そう吐き捨てた。
確かに、確かにクロからその声は聞こえた。
クロはやれやれと言った様に
首を左右に振った。
『気持ち悪い上に煩い奴だな..少しは静かに出来ないのか?』
「い、嫌々こんな状況で冷静になれる訳無いだろ!?」
そうだ。
猫がいきなり喋ったんだ。
静かになれる訳無い。
だいたい何故こんなに偉そうなんだ。
しかもまた気持ち悪いって言ってるし。
『仕方ないな..』
思考を巡らせているとふいにクロがそう呟やいた。
は?と小さく息を吐いた瞬間、
ボフン!
と、爆発音が響いた。
いきなりの事に絶句する。
リビングに煙が立ち込める中、
俺以外のもう一つの人影があることに気付く。
煙が消え始めると、
見えてきた人影の正体は
綺麗な黒髪の美少年だった。