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ニートと黒猫。

第1章 ニートと黒猫


窓から見える外には桜が舞っている。
気が付けばもう春。

ニートである俺には日付を気にするなんて事は必要無い訳で、
季節すら曖昧だった。
ただ暖かくなったとだけ分かる。

あ。そうそう。
俺の名前は神崎 透(かんざき とおる)。職業はイケニートだ。まあ最後のは冗談だが。

しかしまあ...



「…暇だ」

ちょうど今、遣り込んだゲームが終わり
特にしたい事が無くなったのだ。
かといって外には絶対出たくない。ニートは家でしか生きられないからな。
家から出た瞬間、即死だ。うん。

なんて事を思っていると、
ドアの外からガチャリ、という音に続き、
父の声が響いた。

「透ー」

「…なにー?」

動く事はせず、比較的大きな声で返事をした。
..そういや父は仕事に行った筈だったが、

「ちょっと降りて来い」

..動きたくない。

だなんて我儘は大人気ないと思い
仕方なく部屋を出て、父の所へ向かった。

「何?」

玄関先にいる父が見えると俺は再びそう聞いた。
しかし、内容は父の腕にはまっている物体を見て安易に予想がついた。

「嗚呼。実は家の近くにこいつが捨てられていてな..」

そう言うと父は腕の中にいた物体を
手で抱えて見せて来る。
それは、小さくにゃあ、と鳴いてみせた。

「..猫?」

黒い綺麗な毛並みを持ったそれは、
黒猫だった。
潤んだ瞳がじっ、と俺を見つめる。
嗚呼、可愛い。

そんな黒猫に見惚れていると、

「仕事行く前に見つけてな。仕事場に連れては行けないから一旦帰って来たんだ。透、こいつの面倒見てやってくれ」

父はそう言うと俺の返事も聞かずに
無理矢理抱きかかえさせた。

「は、ちょっ」

「じゃあ急がないといけないから俺はここで」

「親父!?」

俺の叫びは虚しく響き、玄関のドアはパタンと閉じられた。
...まあ嫌じゃあ無いんだが..。

俺は小さく溜息を吐き、黒猫を抱えたままその場に立ち尽くしていた。
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