第24章 告げる
ゴッと鈍い音が響き渡る。
五条が夏油の顔面を殴ったのだ。しかし夏油は微かによろけただけで、グッと足に力を踏み入れる。
「私は好きだと伝えた。彼女に、好きだと伝えたんだ。君のようないくじなしとは違うッ」
夏油はあえて五条の拳を受け入れたのだ。
「俺がいくじなし?ついに頭沸いたかッ!!」
「私はいつだって正気だよ。何も分かっていないのは君の方だろうッ!!」
今度は夏油の番だ。まるで鉛玉で殴ったかのように重たいストレートが五条の右頬へとぶつかる。
バキッドコッと痛々しい音が響くが、五条も夏油も己の術式を使うことはなく、ただ目の前の相手へと殴りかかった。
何故術式を使わないのか。普段の喧嘩ならば使っていたはずだ。
けれど、五条も夏油も己の拳をぶつけ合うだけで、決して呪術を使うことはなかった。
それには意味があったはずだ、二人にしか分からない、そんな意味が。