第24章 告げる
突然、ガラガラっという音が道場内に響き渡り、私はびくりと身体を揺らした。
ハッとしてワンテンポ遅れて扉の方へと視線を向ければ、いつもならばゆるりと細められている瞳を見開いた傑先輩が立っている。
私の上に覆い被さる五条先輩。いくら私が胸元を押したからといっても、その距離はかなり近い。
「傑か」
けれど今のこの状況に、唖然としている私は傑先輩を見つめるだけで精一杯で、先に身体を動かしたのは五条先輩の方だった。
「夏油さん?どうしたんですか?」
ガタイの良い傑先輩で見えはしないえれど、背後からは雄ちゃんの声が聞こえてくる。きっといきなり立ち止まった傑先輩を不思議に思ったのだろう。
けれど、まるで時が止まったみたいだった傑先輩は次の瞬間にはいつも通りの表情でニコリと笑顔を作ると道場内へと足を踏み入れた。
「君達が体術の特訓をしてるって聞いてね、私達も参加しに来たのさ」
傑先輩の後ろからはジャージ姿の雄ちゃんと七ちゃんも入って来る。しかし未だ畳から立たずにいる私を見てキョトンとそんな表情を見せた。
「エナちゃん大丈夫?五条さんに吹っ飛ばされた?」
そう思うのも無理はないだろう。先ほどの光景を見たのは傑先輩だけで、もう五条先輩はとっくに私の上から退いて立ち上がっているのだから。一人畳に転がっている私はどう考えても吹っ飛ばされたようにしか見えないはずだ。