第20章 厄介ごと
その傑先輩の姿を見ただけで、私の出した答えに花丸をもらえた様な気がした。
その笑顔が、その温かさが、全て間違っていなかったのだと。そう言ってくれているような気すらして。
「私も、傑先輩のこと大切にします」
「…っ」
思わず口からこぼれ落ちた私のそんな言葉に、傑先輩は言葉の代わりに私を目一杯抱きしめそして笑顔を向けてくれた。
私は傑先輩の恋人になった。そして傑先輩は私の彼氏になったんだ。
そう思うと、何だかとても胸の奥底がくすぐったくて…傑先輩の大きな背中を抱きしめながらやけに幸せな気持ちになった。
五条先輩のことを忘れられたわけではない…
それでも私は傑先輩を選んだ。この人の温もりを受け入れたのだ。なら、これから進むべき道は一つじゃないか。
この優しくも穏やかなこの人を大切にしたい。私を大切にしてくれているのと同じように、この人へその想いを返したい。そんな感情が自然と生まれてくる。
先ほどまで答えは出ていなかったはずなのに。傑先輩の胸に抱かれた瞬間、彼の気持ちに応えたいとそう思った。
だってこんなにも私を想ってくれている傑先輩の手を取らないことは、とても難しいことだから。
目の前で笑顔を見せてくれる先輩の、笑顔の源でありたいと純粋にそう思えたんだ。