第19章 可愛いひと
カキーンッ
「悟、加減って言葉知ってる?」
「あー!!新しく夜蛾先生に許可もらって購入したバットがー!!!」
「見事に粉々ですね」
青空の下、野球に勤しむ男子四人。そしてそんな姿を眺める私と硝子先輩。硝子先輩は堂々と煙草をふかしながら、私はホットミルクティーを口にしながらそんな光景を眺める。
「こんな寒空の下よくやるね」
「本当元気ですよね」
季節は三月、まだまだ寒い風が吹く。どんなに青空が広がっていようと、東京とはいえ山奥にある高専のグラウンドは極寒だ。
「おい硝子!俺と灰原のチームに点追加しといてー」
こちらへと合図を送りながら硝子先輩にそう叫んだ五条先輩に、硝子先輩は面倒そうな様子を見せながらも地面へと正の字をたしていく。
「追加も何も、こんなんじゃもう続けられないだろう」
「さすが五条先輩!ボールも遥か彼方に飛んで行きました!!」
「灰原、褒めるところじゃありませんよ」
「ボールもう一つあるし、今度は的当て勝負な。負けた奴が明日の階段掃除〜」
「えぇー!!」
「私は少し休むよ、やるなら三人でやってくれ」
「はぁ!?傑、逃げんのかよ」
「夏油さんズルイです!!」
「好きなように言うと良い、どうせ的が粉々に壊れて勝負はお預けだろうからね」
「私もやりたくないんですが」
「これだから変な前髪君は根性がねぇ。七海は強制参加に決まってんだろ」