第15章 浮遊感
髪を丁寧に乾かしてくれた五条先輩は、そのまま私を抱きかかえるとすでに敷いてあった布団へとそっと下ろす。
「水飲むか?」
「うん、飲む」
ゴロゴロとしながらそう答える私に、先輩は蓋を開けたペットボトルを手渡してくれるけれど、今の私には上体を起こすことでら億劫でそのままペットボトルを持ったままジーッと水を見つめていると、こちらへと溜め息が落とされる。
だけれどしばらくすると、そのペットボトルは私の手からするりと抜けて五条先輩の口へと運ばれていく。そしてそのまま五条先輩は私の顎をくいっと持ち上げると互いの唇をそっと口付けた。
ヒンヤリとしたモノが喉の奥を抜けていく。そして薄らと開けた瞳の先ではやはり碧色がこちらをスッと真っ直ぐに見下ろしていて、もう一度先輩がペットボトルの水を含ませると私の口へとそれを移した。
「冷たくて気持ち良い…」
冷たい水の感覚にごくごくと喉を鳴らす。先輩は取りこぼした私の唇の水滴を舌先でペロリと舐め取った。
「もっといる?」
「うん…もっと」
それは口付けに対してなのか、それとも水分を摂取しなくてはと言う意志なのかは自身の中で曖昧で…ただもの凄く今の行為に酔いしれていることは確かだった。
冷たい水が
先輩の瞳が、唇が、優しい声が心地良い。
どこまでも心地良く、そして私を柔い沼へと堕とす。
どこまでもどこまでも
ゆっくりと着実に、
その奥底へと
私を………