第15章 浮遊感
五条先輩のことを、どうしようもないクズだとはさすがに思ってはいないが…そもそもそんなこと思ってたら好きにはならないし。それでも先輩のクズっぷりを目撃したことが無いわけではない。
以前窓の子が五条先輩に告白をしていて、それに対し「は?そもそもお前誰だよ。いきなり好きとか言われても迷惑だわ」と真顔で女の子を見下ろしている時はドン引きしたほどだ。
でもよくよく考えたら、未来の私もあぁなるのかもしれない。あんな顔で五条先輩に冷めた視線を落とされるのかもしれない。
そう思ったら、それはとても他人事には思えなくて…身体を震わせたことを今でも覚えている。
お前誰だよ、とは流石にならないだろうけど…好きとか言われても迷惑だわって言葉を自分が言われるイメージだけはしっかりと出来てしまったからだ。
例え五条先輩に好きだと言わなかったとして、一体この関係をいつまで続ける事ができるだろうか。
私達の関係には何の保証もないのだ。恋人にだってそんなものないかもしれないけれど…でも私達の関係はどう考えたってそれ以下で…
いつどこで捨てられるかなんてちっとも分かりはしないのだ。
明日かもしれない、一ヶ月後かもしれない。はたまた一年後か…それとも今日なのか…