第14章 堕ちてやる
見慣れた黒塗りの車のドアを開ければ、足を放り投げドカッと踏ん反り返って座っている五条先輩の姿。
片手で携帯を弄りながら口には棒付きキャンディーを咥えている。
「五条先輩おはよう、今日は早いね」
「目が覚めたんだよ」
「うわぁ、先輩でもそんな時あるんだね」
いつも一緒に眠る時は起こしてもなかなか起きない事がほとんどだ。任務に行く時だっていつも予定時間ギリギリが、微妙にすこーしだけ遅刻して来て傑先輩や硝子先輩に怒られているのを何度も見た気がする。
だから正直言って、待ち合わせ時間よりも前にここにいることが不思議でならないし、なんなら早めに来た私よりも先に車に乗っていたことが驚きでしか無い。
しかしそれは、運転席に座っていた馴染みの補助監督さんも同じだったのか、バックミラー越しに私と視線が会うなり、こくこくと意味ありげに相槌を打っていたほどだ。
「そもそも俺、ショートスリーパーだし」
「え!?」
今何と聞こえたか…
ショートスリーパー?それってあれだよね、睡眠時間がやたらと少ない人のことだよね?五条先輩が?そんなはずなくない?
だっていっつも起こしても本当に全然起きる気配ないのに??