第11章 無意識に
何だか二人して、照れたような空気が部屋中に充満する。ドドドドッと心臓がうるさくて胸が少し痛いのは気のせいではないだろう。
うん、今分かった気がする。どうして傑先輩があぁ言ったのか…ここまで顔を真っ赤に染め嬉しそうな顔を見せたのか。
だって、私も…傑先輩に名前を呼ばれて嬉しいと思ったから。
今どき小学生や中学生ですら異性を名前で呼ぶなど普通なはずなのに…こうして傑先輩に呼ばれたことがここまで照れ臭くて恥ずかしいなんて。
今まで苗字で呼び合っていたモノが変わる。お互いの名前を呼ぶように。
「敬語も…使わないように頑張りますね…」
「ふふ、今すでに使っているけれどね」
「あ、つい!使わないように、頑張る…ね」
「うん、ありがとう」
夏油先輩の柔らかな雰囲気が好きだ。まるで柔らかで温かな何かに包まれるみたいで。
この人の笑顔が好きだ。ホッと安心するみたいに穏やかな気持ちになれるから。
「先輩の誕生日当日までには、名前も敬語も完璧になってるはず…だから」
「楽しみにしているよ」