第11章 無意識に
「夏油先輩ってこのお菓子好きなんですか?」
「ん?」
最近では、五条先輩が外泊する時は基本夏油先輩の部屋に泊まることが増えた。そうすれば、何も考えなくても済むからだ。
あの怪我をして五条先輩と一緒にいた三日間で、少なからず私と五条先輩の距離が縮まったんじゃないかと思っていたけれど、それは大きな間違いで、今までと何も変わることなんて無かった。
1週間に一度ほど五条先輩の部屋に行ってセックスする関係。それ以上でもそれ以下でもない。
ただ時折…疲れて気分じゃ無くなったのか、部屋に呼び出され行ったもののセックスをする事はなく、ただ五条先輩が私を抱きしめて眠るという日が何度かあった。それも最近では回数が増えたように思う。多分、最近は特に忙しそうに見えたから疲れていたのかもしれない。
「このタケノコの形したチョコと、いちご味のポッキー」
「あぁ、それか。見かけるとつい買ってしまうんだよね、無意識なのかな」
私を見た後フッと笑った夏油先輩は、タケノコの形をしたお菓子をヒョイっと口へと放り込んだ。
「無意識?見た目が好みなんですかね?私これすごい好きでよく食べるんですよ」
「うん、知っているよ。よく談話室で食べているのを見かけるからね」
「あはは、知られてたんだ。何か恥ずかしいなぁ」と言葉を付け足した私を、夏油先輩は瞳を細めて見下ろす。
何故だろうか、この顔を見るとやけにホッとして安心した気持ちになるのは。