第10章 淡い想い
だからその変化には直ぐに気が付いた。彼女の見つめる先が、私の親友に向けられているのだということは。
もちろんその後の二人の変化にも気が付いたし、二人の関係を知るのにもそう時間は掛からなかった。
“淡い恋”だと思っていた。
でもそんなのは全くの勘違いで、己の愚かさと後悔ばかりが自身を包み込む。こんなの淡い恋な訳がない…それならば、こんなにも息が詰まるほど苦しくなるはずが無い。
胸が痛む、
彼女が見つめている先が自分ではないという現実に。
喉の奥が軋む。
情け無くて震えるほど。
淡い恋心などと、そんな簡単な言葉で片付けられはしなかった。
好きだなんて…そんな単純な言葉などでは表せられないからだ。
「…柊木?」
彼女が涙を流している姿を見た瞬間、まるで何かが弾けたみたいに目の前が真っ暗になった。
優しい彼女に自分の気持ちを伝えれば、きっと君を悩ませてしまう。そんなことは望んでいない…
何故なら私は、君の笑顔がとても好きだからだ。
一目見て息を呑むほどに、たまらなく君の笑顔が好きだから。
だからどうか笑っていて。
たとえ自身の気持ちを押し殺してでも、君を少しでも笑顔にしたい。
だからどうかお願いだ
淡い恋などではなく、このまるで海底のように深い想いだろうが完璧に隠してみせるから。
だからどうか
“君の笑顔を…”