第9章 合同任務
本当に惨めだ。人に言えないような恋愛をしているだけではなく、こんな事を心の奥底では考えているなんて。とてもじゃないが高専の人達には知られたくもないはずなのに…それでも夏油先輩には言えてしまう。
何でだろうか…自分の汚さも惨めさも卑怯な心でさえも…夏油先輩には自然と話してしまうんだ。
そして…座ったまま俯く私を、目の前に立っていた夏油先輩がそのままふわりと抱きしめた。少しだけ背を丸めて、こちらを見下ろすように。
私はそれにピクリと身体をゆらすが、夏油先輩はそれすらも優しく包むみたいに身体を寄せ腕へとギュっと力を込めた。
「そんなことはないさ、大切な想いの前では誰しもが悩み苦しむモノだから。だから柊木のその想いが、どうしようもないだなんて私は思わないよ」
喉が詰まるみたいな感覚も、指先が冷えるような己への嫌悪にも、夏油先輩と一緒ならば薄らいでいくような気すらする。
一人で抱えきれないこの想いを…この人に話すことによって軽くしたいなんてそんな単純なことではないけれど。
何を言っても受け止めてくれるであろう夏油先輩に甘えているのは確かだった。