第8章 気まぐれ
「だから聞いてんだろ」
その当然とも言える言葉使いに、思わず私の胸がドクンっと大きな音を上げた。
忙しい五条先輩のせっかくの休みだというのに、一緒にいて良いなんて。そんなの嬉しいどころの話じゃない。
「オムライスが良い」
今すぐ飛び跳ねてしまいたくなるほどの喜びを、必死で隠しながら何とか平静を装いそう答えれば
「待ってろ」
と、やはりまるで昨日のデジャブでも見ているようなその言葉に、扉が閉まった瞬間私はヘロヘロと床へとしゃがみ込んだ。
「うぅー、ズルイ…何でどんどん好きにさせるの…」
もう嫌だと思うほどに、今日も今日とて五条先輩を好きになっていく。
この好きが募ったところで…決して発散する場所などなく、まるで使い捨てのガムみたいにゴミ箱にでも捨て去らないといけないような感情なのにも関わらず…だ。
あの人は何処までも私のツボをついて好きにさせてくるのだ。まぁあっちはそんな事微塵も知りはし無いだろうけど…
私が勝手にどんどん好きになっていってるだけなんだけど…