第8章 気まぐれ
夏油先輩と別れ部屋へ戻った後、私は硝子先輩に言われた通りそれはそれは大人しくしていた。
雄ちゃんに借りた漫画を読みながら、ボーッと部屋で過ごして、動いたと言えば昼食を食堂まで取りに行ったくらいだ。
昼食は硝子先輩が持ってきてくれると連絡が来たけれど、さすがに部屋まで運んでもらうのは悪いし…ぶっちゃけ回復力が早すぎるのか、これと言って歩けないという感じでも全くなくて、きっとこのチャンスを逃せば数日間歩くタイミングすら訪れないんじゃないかと思い昼食は自分で食堂まで取りに行った。
午後にはあまりには暇すぎで七海ちゃんに電話をしたけれど「用事がないなら切りますよ」と5分ほどくだらない話をつらつらと言っていたらあっという間に切られてしまった。
え?冷たくない?冷たすぎない?なんて思わなくもなかったけど、まぁ七ちゃんらしいと言ったら七ちゃんらしい。
その後は珍しくメールが来て、任務先に着いたらしい夏油先輩から『ものすごく吹雪いてる。こんな中外で任務』なんていうメッセージとともに信じられないくらい降り積もった雪景色の写真が送られてきて、この景色を見た瞬間の夏油先輩の絶望的な顔が想像出来て思わず笑ってしまった。任務先雪国だったんだ。
この吹雪の中三日間も任務だなんて過酷過ぎる。しかも一人で、だ。
すごい雪!という言葉と共に、雪だるまも作れないくらい吹雪いてて残念ですね。とメッセージを送れば、その1時間後に吹雪の中に佇む小さな雪だるまの写真が送られてきて、またまた吹き出した。
だって夏油先輩が一人でこんな吹雪の中雪だるまを作っていたなんて笑わない方が無理だ。