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MapleProject〜Happybirthday〜

第14章 水無瀬奏誕生日特別ss


「もっと…働かなきゃ…」
母親が出ていってからもう11年になる。
あれは俺がまだ7歳、小学1年生の頃。
父親は一流企業の社員で決して裕福な暮らしとは言えないものの、家族3人で仲睦まじく暮らしていた。
しかし、母親がママさん友達の飲み会の後、二次会で寄ったホストにどっぷり浸かってしまい、家の貯金どころか多額の借金を背負って家を出て行ってしまった。
正直、もう母親の事なんか思い出せない。
思い出したくもない。
知らぬ間に連帯保証人になっていた父親はその借金を全て背負うことになり、さらに会社も不景気によるリストラで追い出され、何とか見つけた町工場で少しずつではあるが借金を返すという生活を送っていた。
そんな生活を続け俺は中三になり、進路の選択を迫られる。俺の心の中は決まっていた。
「父さん…俺、働く。働いて、俺も借金返す。」
当然の事ながら父親にも先生にも止められた。せめて高校は卒業しなさいと。
しかし、このまま何もせずに見ている方が辛かった。
少しでも父親の助けになりたかったから。
大人の反対を押し切り、俺は高校に行かずに働いた。
といっても中卒の人間を雇ってくれるところもなく、フリーターとして働いた。
3年弱が経ち、18歳になった。18歳になれば夜勤が出来る。もっと稼げる。
いつものバイトを終えた後俺は夜勤へと向かった。
夜勤は工事現場の道路整理と資材運び。
眠気を堪えながら必死に動いた。
慣れない仕事というのもあってとてつもない疲労感に見舞われながらも何とか終業の時間。
「疲れた…家帰って寝よう…」
今日は仕事を入れてなくて良かった。ゆっくり休める。
寝て起きたら夜勤がまたある。それまでゆっくり体を休めよう。
朝の通勤で駅から人が出てくるのを横目に駅へと向かう。
「あ…やば….チャージしてないや…」
行きの電車でICカードの残高がほぼなかったのを思い出して引き返そうとしたその時だった。
「あれ…視界が…」
連日の勤務に夜勤が重なって限界が来ていた。
そのまま倒れそうになった。その時…
『おっと、大丈夫か?』
誰かに支えられた気がした。しかし、もう限界だった。
『おい、大丈夫かよ!?気絶してる…社長、この子どうする?』
『ここからだと救急車を呼ぶより一旦事務所に連れてくのが早いわね……担げる?』
『ええ、行けますよ。よいしょっと…なんだこいつ…めっちゃ軽いな…』

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