MapleProject〜Happybirthday〜
第10章 松永朝陽誕生日特別ss
……
『社長? どうしました?』
『あのオレンジの髪の子... 気になるの......。 ちょっと声かけてく
る!』
『え、ちょ ! ? 社長!?』
仕事の打ち合わせで相手先に出向いた帰り道、 近道をしようと言っ
て住宅街に入りこんだ社長がいきなり走り出した。
『ねぇそこの君! アイドル興味無い?』
『ちょっと社長! それじゃ怪しい勧誘ですって!
いい加減スカウト慣れてください!?』
急にアイドル興味無い? って言われたその子は困惑した表情でこちらを見ている。
『あ、ごめんなさいね。 私はMapleProject 社長の財前類です』
『同じくMapleProjectでマネージャーをしてます、 東雲です』
「オレは松永朝陽です! ......で、 アイドル...ですか?」
『そう! 音楽好きでしょ?』
「好き...ですけど。 なんでわかったんですか?」
『人通り少なめな住宅街とはいえ路上で普通の声量で歌ってる子が歌が嫌いなわけないでしょ?』
「..... 歌って...ました?」
『歌ってましたね』
「マジかー!よく道ばたで大きな声で歌うな!って怒られるんです
けど、なかなか難しくて...。 気づいたら声出しちゃってるっていう
か...」
『歌うの気持ちいいもんね! もっと大きな舞台でもっと気持ち良く
歌いたくない?』
「あー...んー....」
その子... 松永くんはなにかに迷うように視線をさまよわせる。
『なにか気になることでもあるの?』
「気になることっていうか…..」
『我々は怪しいものではありませんよ?』
「それはわかってます! MapleProject さんって有名だし。 ただ…..」
『ただ?』
「オレ、 努力するってことがわからなくて…..」
『わからない... ですか?』
言葉の意味がいまいちわからず、 社長と顔を見合わせる。
「はい。 昔は努力してたし、 努力して出来ないことがどんどん出来るようになるのは楽しかった。
でもどれだけ努力して、苦労して出来るようになっても 『元からだいたいなんでも出来る器用な人』 としか見てもらえなくて...。
オレの努力は認めてもらえなかった。 そのうち努力する、 頑張ることがわからなくなっちゃったんです…。」
『そう...だったの』
