第1章 Forget me not
母が死んだ。
淡いブルーをまとい、美しく死んだ。
「……不気味だ」
「人じゃない」
母の死に顔はあまりにも穏やかなものだった。
冷たくなった生気のない手を握り、涙を流す。だが、ローズを囲う人々は口々に母を罵った。
「この娘も同じじゃないのか?」
「きっとそうだ」
「私たちに厄災をもたらすに違いない」
そしてそれはローズに向く。
冷えた目がローズに刺さる。恐ろしい言葉を口にしながら、彼らはローズに手を伸ばした。
「殺せ」
「殺すぞ」
「母親の死体も燃やせ」
母の手を握った腕を掴まれる。
無理やり引っ張られ、母から引き剥がされる。
拒絶の悲鳴を上げるがだれも聞く耳を持たない。
「お母さんっっ!!」
瞬く間に母が彼らに囲まれた。1人が鉈を振り上げた。
ローズの目の前で母は血飛沫を散らす。
あれだけ美しかったブルーが赤に染まった。
「あぁッ……!」
涙が溢れた。
母を失った悲しみに。母を救えなかった怒りに。
ローズは涙を流し続けた。