第3章 西ブロック
「紫苑の仕事が終わるのはもう少し後かな」
森林公園を歩きながら、ユキは呟いた。
今日は沙布と3人で帰りに会う事になっている。
近くにベンチが無いかと辺りを見回し、良いところがあったのでユキが足を進めた。
ところが、その歩みはベンチの前までで止まる。
「……なにこれ」
近くでサンポが何か騒いでいる。
しかし今のユキには何も聞こえていない。
ベンチの横を見たまま、ユキは動けないでいた。
「ユキ!!!」
見るな!と紫苑がユキの視界を手で覆った。
そうして離れたところまで連れて行く。
ここにいてと言われて、ユキはうんと頷いた。
「数十分で人間の死後硬直が完了してまたたくまに緩解していく~?」
そんなことあるわけないじゃない!と沙布が言った。
あれから紫苑はずっと考えていた。
あの死体の不審さを。
ユキは紫苑と沙布の会話をただ黙って聞いている。
ふと、沙布が紫苑を呼んだ。
「4年前、なんで特別コースに進まなかったの?」
「沙布…なんで今更そんな事を」
「聞きたいからよ」
ふぅ、と一息ついて、紫苑が口を開いた。
「ぼくは特別コースに進む資格がないとして特別待遇のすべてを剥奪された」
進まなかったんじゃなくて、進めなかったんだ。
だから、どうして剥奪されたのよ!
紫苑と沙布の言葉を聞きながら、ユキは4年前のあの日の事を思い出す。
『治安局調査取調官、羅史と申します。君たちは、彼がVCであると知っていましたね?』
『『はい』』
『なぜすぐに通報しなかったのですか?』
『彼がぼくたちと同い年ぐらいの子供に見えました』