• テキストサイズ

白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


「紫苑の仕事が終わるのはもう少し後かな」

森林公園を歩きながら、ユキは呟いた。
今日は沙布と3人で帰りに会う事になっている。
近くにベンチが無いかと辺りを見回し、良いところがあったのでユキが足を進めた。

ところが、その歩みはベンチの前までで止まる。

「……なにこれ」

近くでサンポが何か騒いでいる。
しかし今のユキには何も聞こえていない。
ベンチの横を見たまま、ユキは動けないでいた。

「ユキ!!!」

見るな!と紫苑がユキの視界を手で覆った。
そうして離れたところまで連れて行く。
ここにいてと言われて、ユキはうんと頷いた。



「数十分で人間の死後硬直が完了してまたたくまに緩解していく~?」

そんなことあるわけないじゃない!と沙布が言った。
あれから紫苑はずっと考えていた。
あの死体の不審さを。
ユキは紫苑と沙布の会話をただ黙って聞いている。

ふと、沙布が紫苑を呼んだ。

「4年前、なんで特別コースに進まなかったの?」
「沙布…なんで今更そんな事を」
「聞きたいからよ」

ふぅ、と一息ついて、紫苑が口を開いた。

「ぼくは特別コースに進む資格がないとして特別待遇のすべてを剥奪された」

進まなかったんじゃなくて、進めなかったんだ。
だから、どうして剥奪されたのよ!
紫苑と沙布の言葉を聞きながら、ユキは4年前のあの日の事を思い出す。

『治安局調査取調官、羅史と申します。君たちは、彼がVCであると知っていましたね?』
『『はい』』
『なぜすぐに通報しなかったのですか?』
『彼がぼくたちと同い年ぐらいの子供に見えました』
/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp