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二人の航海者

第7章 青空と曇り空


「私が学校に行かなかったのは、そこの講師の授業が『詰まらない』と思ったからだ。こういう言葉が旧世界にはあってな、【好きこそ物の上手なれ】だ。意味は『好きな物であれば自然と上達する』といった具合かな。

私はたまたま学問が、勉強が。学ぶことがとても好きだった。結果、学校でやる事は既に知っている事柄しか無かったから、詰まらなかった。それはある意味、私にとっての勉強が楽しくて面白過ぎたという事でもある。

そんな私からひとつ断言しよう。学ぶことは、知ることは非常に【面白い】!!君たちが旧世界の叡智のひとつ、『科学』に面白い、と惹かれた様に、私は勉学に惹かれた。皆も科学の楽しさは知っているだろう?その『面白い』『楽しい』気持ちが全ての物事に挑戦する時の源になる。

我々も世界をより面白い物にする努力を惜しまない。授業を面白い物にする努力を、楽しい世界を知りたいと思って貰える様に。我々講師陣の努力と、君たちに新しい世界を見せることを約束しよう。皆。ようこそ、科学学園へ。新しい世界の入口へ。入園おめでとう。学園長、六道院蒼音」

挨拶を終えた蒼音がフッ、と笑った。型破りだが、学ぶことの面白さと新世界への希望を見せる、力強い言葉。ワアッ!!と石神村の人達が湧き上がり、拍手をした。これが学校というものかと。講師たちが生徒達を席に座らせた。その手際を見て龍水は素直に感嘆した。

「はっはーーーー!!流石は蒼音だ!一旦サボり魔というワードで気を引いては、学ぶ事の本質と根源をきっちり教える。実に蒼音らしい挨拶だ!」
「はい、私もそう思います」
フランソワが同意した。

「フランソワ。件のホワイトデーのお返しだが。目出度く蒼音が学園長に就任した今こそ、再度渡すチャンスだと思わないか?」
龍水がふいに双眼鏡から目を離して、真剣な表情で問うとフランソワが肯定する。

そうなのだ。実は蒼音から二月のバレンタインデーに『義理だぞ、義理。義理チョコだ。調子に乗るなよ?』とやけに念押しされつつ、龍水はチョコを貰っていた。トランプのダイヤの形をしたチョコ。ダイヤの外枠の線の中点を通り、真ん中でクロスするホワイトチョコで引いた細線。見た感じ普通のボンボン・チョコレートだ。蒼音が【義理】と言ったので、龍水はそうだと信じ食べた。
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