第7章 赤髪海賊団
きっと私が乗船して来る前は、幼児を乗せると聞いて戸惑う者や不満を感じた者もいただろう。私が父親の船・オーロジャクソン号にいたのを知らない者は、「海賊が預かっていいのか」「世間にゃ助けを求める親子が大勢いるんだぞ」と、不安や複雑な思いを溢しているのを偶然耳にした事もある。けれど前述のように、私に悪い態度を取ったり放置する者はいなかった
そして多くのクルーが陽気で優しい性格なのか、子供が大好きだったり面倒見の良い人達が構ってくれたり、幼い子供の弱さ・危うさに苦手意識がある者達は遠巻きに見守ってくれて。中でも私の養育係になった人達は、赤ん坊時代に会ったのもあって甲斐甲斐しく世話を焼き、楽しい冒険の話をいっばいしてくれた
「白ひげ海賊団のおかげだよ……。彼らがいたから私は海賊の人達を、父さんの全てを嫌いにならずにすんだから……」
シャンクス「つっても、一応海賊なんて悪党だぞ?」
「それでも私は父さんの事が大好きだったから……。せめて弟が好きになれない分もって思っちゃうとね……」
ついつい思い出し笑いで口角も表情も緩んだ私に対し、シャンクスさんも一層愉快そうに両手を叩きながら「そうかそうか!」と豪快に笑うほど喜んだ。そうして体を折り曲げながら笑い続ける彼だが、再びハッと何かを思い出したようで私を見据えてくる
シャンクス「あっ!そーいやぁ、お前さんの弟のルフィだがよ……。見た目が明らかウタより年下なんだが、それじゃあ出産時期に合わねぇよな?」
「ああ、あの子は血の繋がりがないんだよ。引き取ってくれたおじいちゃんの孫なんだ……って言っても、本当の弟同然に思って……ん?」
シャンクス「どうした?」
不思議そうにルフィの事を聞かれたので答えていると、不意に海の方から吹いた潮風が髪を靡かせる。その時、潮風に乗って懐かしい海王類の声が聞こえ、遥か遠い場所からコハクを呼んだ気がして。だから騒動の後にあの子が戻った山の巣へと目を向ければ、コハクが大きな翼を広げて崖に立っている私達の上空を通過し、「ンモゥ〜ナンナノヨ!」と慌しい様子でドーン島を飛び立った
しかし数日後には普通に帰っていたので、この時は恐らく動物同士のトラブルだろうと思った───