第5章 鬼の子達よ、達者にあれ
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そんなドタバタ再会劇は毎度のことである。この日も後から意識を取り戻したエースに、おじいちゃんが「海賊なんぞに憧れるなぁ!!」と『愛ある拳(おじいちゃん曰く)』を鍛錬がてらに食らわせた。その痛すぎる説教が終われば今度は私、おじいちゃんと一緒に山奥に篭ってガチンコ☆地獄の組み手修行で大暴れ……。そうして程よく扱かれまくって私の体、更には地形もボロボロにさせて片付けるまでが私達が一緒に過ごすワンセットだ。とはいえ、さすがに崩れた地層や洞窟なんかは直せないので悪しからず。なんて物騒な家族なんだろう……私達……
だけど今回はそれで終わりじゃなかったようで、いつもより組み手の修行時間やダメージも少なく、ホントに軽〜く軽く流しただけだった。(一応誤解のないように言うと、いつも以上に気を使っただけで当事者以外の被害状況にその保証はありません。)そしておじいちゃん基準の準備運動が終われば、遂にこの日来た目的の『教えたいこと』に触れたのだ
───それが究極体技とされる『六式』に加え、『覇気』と呼ばれる概念の存在と習得だったのだ
まずは『六式』ついて聞くと、これは極限状態にまで体を鍛えた者が得られる体技だという。「指銃・鉄塊・紙絵・剃・月歩・嵐脚」の6種類が存在し、これら全ての技を会得した者を「六式使い」と呼ぶらしい。基本となるのは他に、体得者個人の能力や発想力に応じて様々な応用や発展技が開発されているらしく、細分化すると把握しきれない程のバリエーションがある。熟練の六式使いの戦闘力は文字通りの「百人力」であり、単独での格闘戦のみならず中遠距離戦さえも徒手空拳だけで対処、あろう事か空中戦までその身一つで華麗にこなせるのだとか
まずは鉄塊(テッカイ)。呼吸を整え仁王立ちに構えた全身の隅々にまで力を込めることにより、鍛え上げた肉体そのものを鉄の装甲にも匹敵する程硬化させる防御技。 刃物や銃弾さえも通用しない圧倒的な防御力を誇る。だけど基本的に発動中は硬化を維持するためにほとんど体を動かせない上、電撃や高熱等の単純な運動エネルギーに依存しないダメージとは相性が悪い。増した防御力を物ともしないほど高火力の攻撃には当然ながら限界が存在し、受けていい攻撃と駄目な攻撃をちゃんと見極める必要があるなど無条件で信頼できる防除手段というわけではない
