第16章 ショップ壊滅事件と王下七武海
『ぼったくりBAR』そんな明らかに堅気じゃない飲食店を見つけたのは偶然だ。またしても遠くで感じ取った祖父公認のストーカー?の気配を追いかけ、やっぱり隠れてしまった気配に潜んでいた場所へ行くと当然ながら姿を消して移動していた後だった。だから今度は見聞色を五感に集中させて聴覚、嗅覚で移動する相手の跡を辿って追いかけた。彼方は姿がはっきり見えない程の恐ろしいスピードで走っていて、私も呼吸で足の筋肉を強化しながら静かに追跡していた時に見つけたのが、『ぼったくりBAR』というこのお店……。
そこには高速で逃げ込んだらしいストーカー疑惑の人以外にももう一人、初めて感じる知らない誰かのものがある。恐らくBARの店員さんだと思うんだけど、シャボンディ諸島でこんな名前のお店を構えてられる人だもの……。その事からもきっと只者じゃなさそうな気がしたけれど、危険な雰囲気は無かったから堂々入ってみたら綺麗なごく普通の飲食店。カウンターキッチンには豹柄ズボンのショートカットで色気がある女性店員がいて、その目の前には内側が緑のフード付きの白いマントを羽織った白髪と長い髭を蓄えた老人。
……なんでだろう、この人の顔に既視感がある。
既に椅子で座っていた老人は入って来た私と真正面に見合って笑みを浮かべ、隣の椅子をポンポンと叩いて座るように促してくる。「いらっしゃい、お嬢さんは何にする?」女性に尋ねられた私は一切お酒が飲めない故に、「とびっきり甘くてドン引きされるスイーツ、お願いします」と頼んでみた。すると酒場に不適切なオーダーなのに「オーケーよ」とあっさり頷き、どんどん棚から未開封の甘い材料を出してくる。確かにずっと滞在中は老人に観察されていたから把握済みだったらしいけど、歓迎されるし用意が良すぎじゃない??
「……やっぱりわざと招いてたのね。あなたたちの名前は?」
?「はははっ、さすがに覚えていないか!あの時の君は赤ん坊で、一緒にいたのは2年未満だったからな」
「?!それって……まさかあなた……!!」
?「今の私はレイさんという名でコーティング屋を営んでいるが、本当の私はシルバーズ・レイリーだ」
付き合いの年月と当時の私が赤ん坊であると言われ、オーロ・ジャクソン号の船員だったことはすぐに察しがついた。そして男の正体を知った私は愕然とした。
