第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
彼女の家までの道のり。
楽しそうに話す彼女。
僕は面白い話なんてできないから。
黙って隣を歩くことしかできない。
『私ね』
「なに?」
『月島くんと一緒に帰れて嬉しいよ。
誘っくれてありがとう。』
「な…なに急に…っ」
『月島くんとはクラスが違うから部活でしか会えないもん。それにゆっくり話す機会なんてあんまりないし…。仲良くなりたかったから一緒に帰れて嬉しいよ。』
「ほんと何言ってんの…っ」
『えへへ、ありがと月島くんっ』
「…べつに。」
キミといるとなんだが心がフワフワして変な気持ちになる。なんでか目で追っちゃうし、キミのことばっか気になって…それが何でか知りたくて誘ったなんて恥ずかしいし言いづらい。
「別に僕もキミと話したかったし…
僕の方こそ…その、ありがとう。」
だけどこれくらいなら僕にも言える。
『それじゃあ、私の家ここなので…』
他愛のない会話なんて僕にはできなくて、彼女の話をただ聞くだけ。ほんとただ聞いてるだけ。
「あ…、うん。」
なんか、言った方がいいのかな。
女子と帰るとか初めてでよく分かんない。
『また明日学校でね』
「うん」
愛想の良い返事すらできない。
『…あれ、月島くん指どうしたの』
手に握っていた鍵をジャケットにしまって、俺の手をとった彼女が心配そうに指に触れる。
「これは別に…大丈夫だから。」
『ごめんね気が付かなかった。
私マネージャーなのに…』
「部活中じゃないし…ほんとに平気。
ちょっとぶつけただけ。」
部室のドアに軽く挟んだだけ。
特別痛い訳でもない。
『手当するからあがって』
「いやいや、ちょっと…!」
僕の返事を待たずに家の中へとグイグイ引っ張る。真っ暗なこの家に誰かがいる様子はなくて。
「ねぇ…ちょっと」
『私救急箱取ってくるから待ってて!』
リビングに通されて、ソファに座らされるとパタパタとどこかへ救急箱を取りに部屋を出て行ってしまった。
「ちょっとってば…っ」
人様の家にポツンと取り残されて心細くなる。