第4章 第三話 災いを呼ぶもの
―――――これからが、本当の終焉劇の始まりでス。
「我輩はAKUMA製造者千年伯爵。汚れた神を壊し、AKUMAとともにこの世界を終焉に導く者。お前たちエクソシストがどんなに足掻いても、世界を救うことなど出来ませーン」
絶対にネ…!
そう言って不気味に笑った伯爵は、その場から姿を消した。
フラ、とその場に膝をついたアレン。
駆け寄るリナリーとジャン、トマを見ながら、彩音と不二はイノセンスを解いた。
「周助。私は、AKUMAが怖い。でも…」
「言わなくても分かるよ」
彩音の事ならね、と微笑んだ不二に彩音も微笑んだ。
彩音の左手を、不二の右手が握る。
「強く生きよう、この世界で」
死と隣合わせのこの世界は生きるのにはとても辛いものだろう。
―――――だけどきっと、1人じゃないなら。
アレンたちの方を見ながら、2人は強く頷き合った。
本部に戻った4人は、ラッセルの元へ向かった。
トマは途中で別れている。
扉を開けると、帰ってきたリナリーにコムイが泣きついた。
わんわんと泣きわめくコムイを見て、彩音と不二は呆気にとられる。
あれ?昨日のコムイと同一人物だよね?
彩音が疑問を口にすれば、近くにいたリーバーがシスコンなんだ、とはっきり言った。
奥ではアレンがラッセルと話している。
「ところで2人とも…イノセンスを発動できたんだって?」
キリ、と真面目な顔に戻ったコムイが、彩音と不二を振り返った。
はいと答えると、コムイが少しだけ悲しそうな目で続ける。
「そうか…それなら、これからは君たちにも任務をやってもらわないといけないね」
コムイがそう呟いた時、ジャンからもらったプレゼントをラッセルが開けたのだろう、辺りにたまねぎの匂いが充満した。
匂いの元へ、全員が目を向ける。
こんなものを作ってるようじゃまだまだだと言ったラッセルに、アレンはジャンからの伝言を伝えた。
『俺もいつか、親父のところへ行く。もっと勉強して、力を付けるよ』
―――――だから、それまで待ってて。
うっすらと、ラッセルの瞳に涙が浮かんだ。
驚いた周りが茶化すが、本人はたまねぎのせいだと言い張った。