第4章 第三話 災いを呼ぶもの
1人になっても、前を向いて歩いていける術を。
アレンはその『父親』に教えられた。
「だけど…本当に一人ぼっちになった時、僕はどうしたらいいのか分からなくなった」
彩音は小さく俯く。
1人ではなかった、私には不二がいたから。
でももしあの時、1人だったなら…。
……そこに、千年伯爵がやってきたなら。
伯爵の甘い誘惑に、彩音も勝てなかっただろう。
「僕はマナに傷つけられた左目でAKUMAの魂が見えるようになった。マナの呪いなんだと、償いになるならとエクソシストになろうとしたんだ」
だけどそれは違った。
AKUMAは憎しみで涙を流しているのではない。
何故強く生きてくれなかったのかという、彼らの愛情だと。
「だから僕は、償いではなく生きるためにエクソシストになろうと決めたんです」
不二がブレスレットに目を落とした。
守れなかった幼馴染みの傍にいた人物に、少しだけ不二は不審に思っていた。
もう少しそれに早く気づいていれば。
だから彩音だけは、自分が守らなければ、と。
それが雪砂への、償いなのだと…。
でも…
不二が顔を上げると、彩音と視線が合った。
ふわ、と2人のブレスレットが光り出す。
「AKUMAは悲しすぎる!この世にあっちゃいけない!!」
―――――だから、破壊します!!
そのアレンの言葉に呼応するかのように…。
彩音の手には弓、不二の手には槍が握られていた。
ハッと、ユキサが起き上がった。
窓の外へと視線を向ける。
神田との任務が終わり、汽車で帰路へと着いていた。
ソファで眠っていたユキサが急に起きた事に、神田は閉じていた目をうっすら開く。
どうした、と声をかけたが、ユキサはなんでもないと首を振った。
(今何か…)
自らの胸に溢れた温かい光に、ユキサは戸惑っていた。