第4章 第三話 災いを呼ぶもの
先程まで窓に強く降りつけていた雨が嘘のように晴れた夕方…。
マテールから戻ったアレンたちは、汽車を降りて駅にいた。
「わぁ…!すごいね周助、本当に外国にいるんだね、私達」
「そうだね」
辺りを物珍しそうに見渡しながら、彩音がはしゃぐ。
そんな彩音を見て、不二はホッとしていた。
少し前まで、彩音はユキサの事で落ち込んでいた。
(3年前に、雪砂は死んだんだ…いるわけが、ない)
かつての幼馴染みと瓜二つのユキサの姿を思い出しながらも、不二は小さく首を振った。
そうしてもう一度彩音の方を見れば、彩音は何か考え込んでいる。
どうかしたの?と聞けば、彩音は少し戸惑いながら答えた。
「ねぇ周助…私達、どうしてアレンたちと普通に喋れるんだろ…?」
ハッとした。
そうだ、ここは外国。
自分たちは英語を話しているつもりは一切なかった。
なのに何故アレンたちと普通に会話が出来ていたのか。
また1つの謎が増えた時、2人を呼ぶアレンの声がした。
こっちですよー!と手を振ってくるアレンの元へ、2人が向かったその時。
「AKUMAだぞ!!殺される~~!!!」
駅からそれほど遠くない場所から、少年の叫び声が聞こえた。
それを聞いたアレンは走り出す。
ウォーカー殿!とアレンを追いかけるトマの後を、2人も追った。
「大丈夫ですか!?AKUMAは…!」
ど、こ…?とアレンは呆然と立ち尽くした。
追いついたトマたちも、不思議そうに見る。
数人の大人たちが、そこには立っていた。
アレンたちを見て、1人の男が口を開いた。
「AKUMAなんているわけねぇだろ!」
へ?とアレンたちの目が点になる。
ガツン!と大人の中にいた1人の少年にゲンコツが落とされた。
「ほれみろジャン!お前が殺されるとか言うから…」
わりぃな、とアレンたちは謝罪を受ける。
ジャンの悪戯だ、いつもAKUMAだのなんだのと騒いでいるのだと言う男に、ジャンは叫んだ。
「嘘じゃねーよ!マジでAKUMAはいるんだってば!!さっきこのおっさんが、ハット帽のゴツいやつに殺されたんだよ!!」
1人の男に近づき、必死に訴えるジャンを、大人たちは呆れたような表情で見下ろしている。