第3章 第二話 マテールの亡霊
ララが止まった翌日、アレンたちは教団へ、神田とユキサは次の任務へ行くためにマテールの町で別れる事となった。
昨夜から、ある程度落ち着いてきた彩音と不二も、ユキサに気をつけて、と声をかける。
2人が本当にイノセンスの適合者ならば、また会える。
その時は、仲間として。
ユキサも2人に向かってしっかりと頷いた。
「次の任務はどこ?」
着いてきたのはいいけれど、詳しい内容は聞いていなかったなとユキサは神田に問いかけた。
「ここから近い。イノセンスが絡んでいるかは可能性は低いらしい」
となればAKUMAもいるかは分からない。
逆にそんな任務だからこそ、ユキサを連れていくのを承諾した理由でもある。
道を歩きながら、ふーんと呟くユキサ。
と、ユキサのコートからスノーベルが飛び出してきた。
「ん?スノウ、どうしたの」
「…なんだ?」
パタパタと神田の傍を飛び回っている。
そのうち、ストンと神田の肩に降り立つと、スノーベルは首元のコートの中へ入っていこうとした。
眉を顰めた神田に鷲掴みにされると、キューキューと何かを訴えるように鳴き始める。
どういう事だ、とかんだがユキサの方を見ると、ユキサが思い立ったように言った。
「神田のゴーレムに会いたいのかも?」
は?と神田にしては珍しく間抜けな声が出た。
ティムキャンピーと離れ離れになったから…という言葉に、神田はピクリと反応する。
少しの間の後、はぁとため息を付き、神田は自らのゴーレムを起動した。
ずっと起動しっぱなしだったため、次の任務先まで少し休ませようとしていたのだが。
出てきた黒いゴーレムは、キョロキョロしながら神田の傍を飛んでいる。
神田がスノーベルを離すと、スノーベルは嬉しそうに黒いゴーレムへ近づいて行った。
代わりかよと呟いた神田の言葉は、ユキサの耳には届かなかった。