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【Dグレ夢】TRICOLORE【長編】

第3章 第二話 マテールの亡霊


神田の話が本当なら、こちらの世界でユキサが数年も存在しているのなら、時系列が合わない。
ーーーーー雪砂ではない。
自分たちの事を知らないのも納得がいくのだ。

「ごめんなさい…」

何でお前が謝ってんだ、とユキサは神田に視線を向けられたが、当の本人は落ち着かない様子だ。
あからさまに落ち込んでしまっている彩音をそっと抱き寄せた不二が、ユキサに向き直る。

「突然ごめんね。でも本当にそっくりだったから…驚いちゃって」
「あ、いえ、大丈夫です…」

気まずい空気が流れた。
この空気を壊したのは、意外にも神田だった。

「てめぇらが別の世界から来たってのは信じられねぇ話だが…てめぇらがここに来たなら、その幼馴染みとやらもこの世界にいるんじゃねぇのか?」

ハッと彩音が俯いていた顔を上げた。
探せばいいだろ、と素っ気なく言い、神田はその場を去っていく。
それを見たユキサが、見つかるといいですね、と2人に声をかけて慌てて神田を追いかけて行った。

「でも雪砂は、もう…」

ぽつりと呟いた彩音の表情が曇っていく。
2人は話していなかった。
雪砂が既に、死んでいるという事を。



「神田さんがあんな事言うとは…珍しいね」
「フン…」

探している人がいるのは、神田も同じだ。
2人に自分を重ねて見たのかもしれない。

「さっきコムイから連絡があった。俺はこのまま次の任務に行く」

前を歩きながら言う神田に、ユキサは驚いた。
この戦いで、全員が満身創痍だったはずだ。
いくら自分が治療したからと言っても、まだ全快ではないはずだ。

「だ、大丈夫なの?」
「あぁ。…俺は治るのが早い。お前の訳わからん治療もあったしな」

そういえば、と神田はユキサを振り返る。

「あれも、イノセンスか?傷を癒やすイノセンスなど聞いたこと無いが」
「私にもよく分からないんですけど…」

ユキサの首にあるイノセンスは、言霊という魔法のようなものを唱える事が出来るという。
人を癒やす魔法もあれば、攻撃する魔法、たびたび見せていたシールドを張ったのも魔法だった。
ス、と手のひらを差し出し、ユキサは言う。
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