第25章 第二十四話 アレンを追って
ガタンとベッドが揺れた。
ユキサの胸倉を神田が掴む。
他人の命は守ろうとするくせに、どうして自分の命は簡単に差し出すのか。
ギリ、と歯を噛みしめる神田を見ながら、ユキサが小さく謝った。
「謝るくらいなら、やめろ」
「ごめん…でも」
「でもじゃねぇ!!される側の気持ちも考えろ!」
怒鳴られてびくりと体を揺らす。
される側…そんなの考えた事がなかった。
自分はただ、…ただ皆を守れれば、それでよかったから。
「俺は、お前の苦しむ姿を…。…死ぬのを見たくねぇ」
苦しそうに、本当に辛そうに歪んだ神田の表情を見て、ユキサが目を見開いた。
神田の言葉は、自分が思っているものと同じだった。
記憶を消した時、神田の自分への思いを知った。
自分と同じ思いでいてくれたことに、凄く嬉しかった。
だから分かる。
「(そっか…。私が神田に思っていると同じように…)」
―――――神田も、自分の事を。
「神田」
ユキサが腕を伸ばして神田を抱きしめた。
「神田、ごめんね。…もう、しない」
「………」
「でもね…私、本当はこの言霊は使おうとは思ってなかったんだよ」
神田と共に生きるために、本当に使うつもりはなかった。
だけど神田がアルマと共に行くと決めた時、自分の目的も変わったのだ。
この命は全て、世界を救うために使おうと。
「こんな力があるのはきっと、世界のために使えって事なんだと思った。だから私はこの身を犠牲にしてでも死ぬまでエクソシストのために戦おうって。だけど…」
ギュッと神田にしがみつくように抱きしめた腕を強くする。
「神田は帰ってきてくれた。私、神田と一緒に生きたい」
ユキサの言葉に、神田も強く抱きしめ返した。
もう命を削るなと。
―――――愛してる。
ずっと傍にいてくれと言った神田の言葉に、ユキサは頷いた。
不意に、ユキサが言うのを忘れてたと思った。
「神田…」
体を僅かに離して神田と目を合わせたユキサの瞳から、雫が零れ落ちる。
「おかえり」
「…ただいま」
言いながら2人は小さく微笑んだ。