第18章 第十七話 帰郷
「俺たちはエクソシストだ。そんな状態でもし戦闘にでもなったら…」
そう言って、神田がグッとユキサの腕を掴んだ時だ。
ッ…と小さく声を上げて、ユキサが腕を引っ込めた。
その動きにハッとして神田が再び腕を掴む。
「は、離し…」
抵抗するユキサが神田から逃れようとするが流石に無理があった。
離そうと腕を掴んでくるユキサに構わず、袖を捲り上げる。
瞬間、神田は息を呑んだ。
月明かりしか無い部屋の暗さでも分かるほど、ユキサの腕は傷だらけだった。
「…誰にやられた」
「…………」
「言え!」
「違うの、これは…」
神田の強い声に、ユキサがぽつりぽつりと話し始める。
ヘブラスカとのやり取りの後の事だった。
他のエクソシストたちより早くに医務室から出る許可が下りた4人は自室に戻った。
それから少しして、ルベリエがやってきたという。
「チッ…あいつか…」
「中央庁の偉い人なんだってね。…その人が私の体を調べたいって」
やはりそうなったかと神田は顔を顰める。
もしも拒めば彩音と不二の体を調べる事になる。
だけどユキサが協力すれば2人の事は調べないとルベリエは言った。
「私自身も正直、知りたかったからその話に乗ったんだけど」
日に日に検査が酷くなっていった。
初めは血液検査など簡単なものだったはずが、再生能力があるからと皮膚の細胞を取るために切られたり、抜かれる血液も多くなったり、様々な薬を飲まされたりと。
「さすがにいざとなった時戦えなくなるのでやめてくださいって一度言ったんだけど」
ルベリエから許可はもらっている、抵抗すればあの2人を調べると言われて何も言い返せなくなった。
力なく笑うユキサに、神田がギリッと唇を噛んだ。
「…神田。あの2人には言わないで」
「だがお前はどうなる…!?」
「検査ももうすぐ終わるって話だから、大丈夫なはず」
最後までやりきれば、2人は調べられずに済むから。
ぐいっと神田がユキサを引き寄せる。
ユキサの体は冷たい。
強く、強く…抱きしめる。
「神田…。暖かいね…」
神田の腕の中で、ユキサが安堵の息を漏らしながら、瞳を閉じた。