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【Dグレ夢】TRICOLORE【長編】

第18章 第十七話 帰郷


「もう食べないのかい?」
「うん、ちょっと食欲がなくて…。部屋で休むね」

そう言ってユキサが力なく笑って食堂を出ていった。
周助…と呼んで、彩音が心配そうに視線を向ける。

最近、ユキサの様子が変だった。
怪我は完治しているはずなのにたまに顔色が悪い時もある。
体調が悪いのか聞いても大丈夫だと言って何も話してはくれない。

神田が静かに席を立って、食堂を出ていく。

「さすがに神田も我慢できなくなったかな…?」
「そうだね。数日は様子見ていたみたいだけれど」
「それにしても…本当にユキサに何があったんだろ…」

神田を見ながら、2人はユキサの身を案じていた。



「うっ…」

ゲホッと洗面所で食べた物を吐く。
いつ戦いになるか分からないというのに、容赦がない…。
心の中で悪態をつきながら、ユキサがその場にズルズルと座り込んだ。

「ユキサ」

コン、と控えめな音と共に、名前を呼ばれてびくりと震える。
今はまずい、こんな姿を見せたりでもしたら。
部屋で休むと言ったのだから、このまま去ってくれればと思った。
しかし洗面所の扉は開けっ放しの上、蛇口からは水が出たままだった。

「(水音に気づかない…わけないよね)」

ゆっくりと立ち上がって蛇口をひねる。
水を止めてよろよろと部屋のドアへ向かった。
ドア越しに、何?と声を絞り出す。

「開けるぞ」
「え!?ちょ…」

せっかくドアを開けないで声をかけたのに意味がない。
ユキサが制する前に、神田がドアを開けた。
部屋の中は真っ暗だ。
中に入ってドアを閉めた神田は眉を顰め、電気をつけようとしたがユキサに腕を掴まれる。

「もう休むところだったから、つけなくていい」
「………」
「それで、何の用?」

掴まれた腕はそのままに、神田は何を隠してると聞いた。
一瞬ぴくりと反応を示したユキサが何の話?と返す。

「誤魔化せると思ってるのか」
「誤魔化すも何も、ちょっと体調が悪いだけだよ」
「コムイに診てもらえ」
「コムイさんは忙しいだろうし、医者にちゃんと診てもらってるよ」

それが嘘だということは、神田は知っていた。
診てもらっていたら少なくとも悪化することはないはずだ。
よくならない病気なら、尚更コムイにも診てもらった方がいいだろう。
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