第18章 第十七話 帰郷
―――――歌が聞こえる。
どこかで聞いた事のある旋律…。
一体どこで?誰が弾いてるの…?
『…メ…ア、オレが死…だら…』
あなたは誰………?
スゥ、と目を開ける。
最初に見たのは辺りを見ながら驚きに目を見開いた神田の顔と、メルヘンチックな空。
綺麗なピアノの旋律が流れ、崩壊していたはずの空間が修復されていく。
状況を理解するのに時間がかかったが、そういえばノアのスキンと戦ったなとユキサは思い出した。
起きた気配に気づいて、神田がハッとユキサを見る。
「かん」
だ、と言い終わる前に、きつく抱きしめられた。
まだ覚醒しきっていなかった頭が、一気に覚醒する。
「か、かかか神田!?」
「…もう、1人で逝こうとするなよ」
恥ずかしさから藻掻いていたユキサが、ぴたりと動きを止める。
神田の声が少しだけ震えているに気づき、ごめんとユキサは言った。
「ごめんね」
「………」
「あの、神田…」
泣いてるの?と聞けば泣いてねェとすぐに返事が返ってくる。
出口まで運んだはずの神田が自分の傍にいる理由は。
先程の空間が修復されていたタイミングから、今さっきここに来た感じがしない。
きっと消滅前に駆け付けてくれたのか、都合の良い考えだけどとユキサが小さく微笑んだ。
「ところでこれは…いったいどうなってるの?」
壊れた空間が修復されている。
神田も分からないと答え、立ち上がった。
立てるかと手を差し出され、ユキサは素直にその手を掴む。
しかし足に力が入らず、ユキサはそのまま地面へ座り込んでしまった。