• テキストサイズ

【Dグレ夢】TRICOLORE【長編】

第16章 第十五話 スキン・ボリック・ルーム


「優しき風よ…どうか、神田を…」
「なっ…!お前!!」

―――――あの人の元へ。

ふわりと浮いた神田の体は、出口の扉の前まで運ばれた。
神田が慌ててユキサに視線を向けるとユキサがにっこりと笑った。

「リナリーに謝っておいて…イノセンス、持ち帰れなくて…ごめんって」
「テメェ、何勝手な事を…!」

飛んでこいと手を伸ばす神田に、ユキサは首を振った。
もう飛ぶ力も残っていない、言霊も自分にかけることは出来ない。

「神田…扉が壊れる前に、早く…」
「ッ…!!」

――――大好きだったよ、神田。

ユキサのその言葉は、大きな音にかき消されていった。



出口が破壊される。

神田はその場に座り込んだままだった。
ふらふらと立ち上がり、意識を失ったユキサの元へ、ゆっくりと歩き出す。
もう残っている地面は自分たちの周りだけだった。
神田がユキサへと手を伸ばす。

「…お前を置いて、行けるかよ…」

引き寄せて、力強く抱きしめた。

ユキサは神田が探すあの人ではない。
あの人のために、あの人を見つけるまで、自分は死ぬわけにはいかないとずっと思ってた。
ユキサもそのために神田を生かせようとしてくれたのだ。
だけど神田はユキサを選んだ。
目の前で微笑んでいた、今自分の傍にいるユキサを。

『大きな世界より目の前のものに心が行く』

いつかアレンが言っていた言葉を思い出し、神田がハッと自嘲気味に笑った。
アレンに甘いと言っていた自分が…まさかこんな…。

「お前を1人にはしない。俺が傍にいる。逝く時は…一緒だ」

そう呟いた神田がゆっくりとユキサに唇を落とす。
触れ合ったその瞬間、残っていた最後の地面が崩れ…2人の姿は消え去った。
/ 519ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp