第2章 第一話 黒の教団
「ハハハ…飛び乗り乗車…」
「いつもの事です」
キッパリと答えたファインダーに、アレンとユキサはなんとも言えない表情をして顔を見合わせたのだった。
汽車の天井を開け、乗り込む4人。
その様子に呆気にとられている車掌に、ファインダーが説明した。
予約を取っている事を話すと、車掌が案内します、と歩き出す。
「おい」
列車内を歩きながら神田が口を開いた。
足を止めず、ユキサが神田に視線を向けると、不思議そうに神田が問いかける。
「…お前、声が出ないのか?」
一緒に帰ってきた時は話せていたはずだがと思っていた所で、聞いていたアレンが口を挟んだ。
「ヘブラスカにイノセンスを見てもらった際に、ユキサの羽と、首にあるイノセンスの2つが発動が不安定とかなんとかで、調整したけどまだ本調子じゃないって…」
それで今声が出ないんですというアレンの言葉に、納得する神田。
そういえば、ユキサのイノセンスは寄生型なんでしょうか?などとユキサに問うアレンをよそに、神田は考えていた。
羽と、…首。
あの廃村で見た時の羽と、首はシールドを張った時のものか?
大鎌のイノセンスは問題ないようだから、今回同行を認めたのか。
なんにせよ、全てイノセンスだったという事だ。
この小さい体に3つのイノセンスが宿っている事を考えると、複雑な気持ちになる。
ーーーーーこの俺が、こんなやつに。
内心舌打ちをした所で、車掌がこちらです、と1つの部屋の扉を開けた。
「わぁ~…」
部屋に入り、歓喜の声を上げるアレン。
向かい合うソファの1つに神田が座り込んだ。
凄い個室ですね…と言いながら、反対側のソファの1つにユキサを座らせた。
アレンが立っていようとしたため、ユキサがアレンの手を引いて隣に座らせる。
すみません、ありがとうとはにかみながら座ったアレンを見て、ユキサも頷いた。
途中で詳細を確認してくれと言われていたため、アレンとユキサは資料に目を落とした。
「目的地南イタリア、古代都市マテール…これって随分昔に、滅びた都市ですよね?」
ーーーーーーターゲットはマテールの亡霊。
亡霊?とアレンは首を傾げた。