第15章 第十四話　江戸

「マリ、何が聞こえる？」

江戸城を見ながら、ティエドールがそう聞いた。
とうとうやってきた、江戸。
江戸城の周りにいる巨大なAKUMA。
千年伯爵は、あそこにいる。

「AKUMAの膨大な機械音に混ざって、かすかにクロス部隊の声が聴こえます」
「うん…行ってあげなさい」

一瞬ティエドールを見て、ユキサたちは地を蹴った。



「いた、あそこだ！」

不二が屋根を伝いながら叫ぶ。
ユキサは視線を巡らせた。
近くにいるであろうクロス部隊の反応を捕らえ、すぅ…と息を吸った。

「歌姫＜プリマ＞発動！！彼の者たちに癒しの風を『ヒールウインド』！！！彼の者たちに力を与えん　『レインフォース』！！！彼の者たちに再生の光を『リジェネレイト』！！！」

聞こえてきた声と共に、ラビたちの傷が癒やされ、体が光り出す。
あまりの人数に一瞬くらりとしたユキサだったが、ブンブンと首を振った。

近づくにつれて１人の少年の声がした。
エクソシスト様を離せ！とリナリーを捕らえているノアの体へ拳を突き出している。
その拳はノアの体を貫いているが、ノアは平然としていた。

「チャオジーさん…ダメ…！！」
「ティーズ、喰っちまえ」

バッ！とノアの背中から蝶が飛び出る。
その蝶がチャオジーに襲いかかる瞬間、神田がすばやくノアへ斬りかかった。

「危ねっ！」

ひょいと避けながら、今日は客が多いなとノアが呟く。
未だリナリーを捕らえたままのノアを見て、ユキサが目を見開いた。

―――――あのノア、は………っ！！！！

「ユキサ！？」

地を蹴ったユキサに驚いて彩音が呼ぶが、ユキサはノアへと突っ込んでいった。