第13章 第十二話 東へ
あれから数週間。
ティエドール部隊は東へと足を進めていた。
それは数日前に遡る。
「江戸?」
ティエドールの言葉に彩音と不二が振り返った。
ティエドールは現在、教団とゴーレムで通信している。
聞き覚えのある名前に2人が驚きに顔を見合わせた。
「江戸、って…」
「日本…」
だけど、自分たちがいた世界ではない。
それに江戸と言えば彩音たちがいた時代より遥かに昔だ。
別世界、という事は分かってはいたし、色んな国の雰囲気や会話から昔だとは薄々気づいてはいたが…。
江戸時代か、と2人が納得した。
一方、ユキサと神田も少し反応を示す。
ユキサが神田と出会ったのは、江戸より北の大地だ。
まさか日本に行く事になるのか。
その予想は的中する事となる。
「元帥…江戸、と…」
「あぁ。どうやらクロス部隊の皆が聞いた情報で、クロスが江戸に向かったという事、それから伯爵が江戸で何か怪しい動きをしているという事」
マリが口を開くと、ティエドールが返事を返す。
―――――江戸はすでに激しい戦場と化している。
「というわけで、私たちも急遽江戸に向かわないといけなくなった」
ティエドールたちがいるのはロシア帝国の少し西の方。
江戸までかなり距離がある。
「幸い、ロシア帝国は軍事国家でAKUMAともまともに戦えている。まだ町も無事のうちに抜けたいところだね」
頷く5人の姿を見ながら、それから…とティエドールが続けた。
「ロシア帝国にいる教団のサポーターたちから、新しい団服を受け取るように言われたよ」