第2章 第一話 黒の教団
パタパタと1人の少女が近づいてきた。
「兄さん!」
「リナリー!どうかしたのかい?」
少女の名はリナリー・リー、コムイの妹である。
ちら、とユキサを見たリナリーが、この子が例の…と呟いている。
が、今はそれよりも急ぎの用事があるようで、早口に言った。
「クロス元帥のゴーレムを連れた子が、教団の崖を登ってきたの」
「えぇ!?クロス元帥の!?」
「今門番に調べてもらってるんだけど…」
『アウトだアウトー!こいつ、千年伯爵の仲間…かも…だー!!!』
と、リナリーの言葉を遮るように教団内に響いた言葉。
ユキサがかも?と首を傾げていると隣にいた神田が風を切る。
急に慌ただしくなり、コムイはユキサにその場にいるように伝えたようとしたが、その場にユキサの姿はなかった。
「一匹で来るとは…いい度胸だな」
「ちょ、ちょっと待って!なにか誤解して…っ!」
門の上に立ち、神田は見下ろす。
白い髪に銀の瞳の少年。
神田に付いてきたユキサも、近くの草陰に隠れて様子を伺っていた。
その目はジィ…と少年を見つめている。
「…六幻、抜刀…!!」
刀が光り輝く。
神田は刀を構えると、そのままと少年へ向けて刀を振り下ろした。
ザンッ!と空を切る、少年はわずかに避けたようだった。
瞬間、驚いた少年の左腕が大きく変形する。
「!」
「あれは…」
イノセンス…!
様子を見ていたユキサが少年の前へ飛び出したのと、神田が続けて攻撃を繰り出したのはほぼ同時だった。
「神田さん!ちょっとまっ…」
「馬鹿っ…お前!!」
「危ない!!」
飛び出してきたユキサを庇うように、少年がそのイノセンスを持つ左腕を盾にする。
斬られた痛みに顔をしかめた少年は、ユキサを抱えながら後ろに下がった。
「対AKUMA武器に傷が…!」
「…てめぇ…その腕は何だ?」