第2章 第一話 黒の教団
ーーーーー黒の教団本部・地下水路。
暗い暗い洞窟のような雰囲気が漂う場所を、3人を乗せた小舟がゆっくりと流れる。
小舟を漕いでいるのはファインダーのナギサ。
膝に片肘をつきながら座る神田と、辺りをキョロキョロしながら時折立ち上がるユキサ。
そんなユキサに落ちないように気をつけて下さいね、とナギサが声をかける。
そうして小舟が船着き場に到着した。
「さぁユキサ様。ようこそ、黒の教団本部へ」
ナギサに手を差し出され、掴んだユキサはグイッと引っ張られる。
ありがとう、とお礼を言ってる横で、神田も小舟から降りてスタスタと歩き出した。
本部へと帰る途中途中で宿に泊まっていた際、非常に不本意ではあったが神田はユキサと同室になる事もあった。
元々神田は熟睡する事はなかったため、ほとんどユキサにベッドを譲っていた。
その間、空いている時間で報告書を書いており、それをコムイへと届けに向かおうとした。
その様子を見て、タタッ…と神田へ近づいたのはユキサ。
ナギサには教団本部に着いたら、神田がコムイへの報告書を届けに行く際に一緒に行くように言われていた。
2人を見送り、ナギサも本部内へ入っていった。
「やぁ!おかえり神田君!」
疲れた表情をしてはいるが、とても明るく声をかけてきた人物。
この教団本部の室長、コムイ・リーだ。
司令室に入るなりユキサはその部屋の有様に驚いて、少しだけ神田の後ろに隠れていた。
「報告書だ」
「任務お疲れ様。…話は聞いていたけど、その子が?」
視線を向けられたユキサはゆっくりと前へ出る。
じぃ、とコムイを見ながら、口を開いた。
「は、初めまして…。ユキサです」
「うんうん、2人から話は聞いているよ。…イノセンスを持っているんだって?」
真剣な表情で告げられた言葉に、ぐっと言葉を詰まらせるユキサ。
その様子を見て、別に取り上げたりするわけじゃないから安心して、とニコリとするコムイ。
居心地が悪そうにしながらも、ユキサは頷いた。
「イノセンスの事はヘブラスカに聞いてみないとね」
それじゃあこれから…と言った所で、司令室の奥が騒がしくなる。