第11章 第十話 奇妙な館
不二が瓦礫の中から咳き込みながら出てくると、続いてティエドールやマリも顔を覗かせた。
マリの傍にはアルフォンスの姿がある。
「皆、大丈夫?」
空からユキサに掴まりながら降りてきたのは彩音。
不二が大丈夫だと頷いた。
「…………」
「言ったはずだよ、物事は柔軟に考えないと…隠れる場所をなくすなら、これくらいやらないとね」
呆然と立ち尽くしている神田に、ティエドールが言う。
彩音はユキサに掴まりながらは上から全てを見ていたため、その壊れように若干顔を引き攣らせている。
神田、と呼ばれて振り返ると、ユキサが上を差した。
そこには3体の悪魔。
ハッと我に返った神田が六幻を構え、マリがAKUMAの動きを封じる。
「はぁ!!」
高く飛んだ神田が、六幻を振り下ろす。
大きな爆発音が鳴り響き、3体のAKUMAはその場から消え去った。
「あんなに素晴らしい建築物が失われるとは…」
日が暮れ始めた頃…。
建物の残骸を見ながら、なんて悲しいことだ、と涙を流すティエドール。
自分でやっておいて…と周りが少しだけ呆れたようなため息をついた。
「…。…実は、父が倒れたんです」
「クラウスさん?」
「だからもう、建築の勉強を続けるわけにはいかなかった。建築への想いは絶とうと思ったんです」
―――――最後にヤーンの屋敷を見て、諦めようと思った。
でも…とアルフォンスがティエドールに近付く。
「僕、建築の勉強を続けます!さっきからアイデアが次々と浮かんでくるんです!ここに建てるならどんな建物にしようかって!」
ヤーンの屋敷がなくなって初めて気づいた。
僕はその屋敷を超える建物を作りたい。
アルフォンスのその言葉に、ティエドールは嬉しそうに笑っていた。