第11章 第十話 奇妙な館
今まで周りが気づいてなかった事だが、ユキサは自分に魔法を使う事が出来ない。
ティエドールと旅が始まってすぐAKUMAと遭遇し、強化と再生をした際に、ティエドールの何気ない一言で発覚した。
「ユキサちゃん。この魔法、何故自分のかけないのかな?それからこの再生の魔法。キミ自身にもダメージがいっているようだね?」
ぽかんとユキサが固まった。
まさか会ったばかりのティエドールに魔法の仕組みを知られるとは思っていなかったのだ。
聞いた周りも驚きを隠せなかった。
「…じ、自分には魔法は使えないんです。それから再生魔法は…、対象者と術者の体をリンクして、私が怪我を引き受けて治癒しているんです」
「え!?」
ユキサの言葉に彩音がどういう事!?と物凄い剣幕でユキサに近付く。
てっきりユキサも含めて、魔法をかけているものだと思っていた神田たち。
しかも再生の魔法は、怪我を負えばそれをユキサが身に受けているなど、全く気づきもしなかった。
「…癒やしの術も使えないって事だね?」
「う、うん。でもほら、私治癒力高いから」
多少の傷はすぐに回復する。
慌てたように言うユキサだったが、今まで知らず知らずのうちにユキサをたくさん傷つけていた事に、何も言えなくなった。
よく考えれば分かる事だった。
何のリスクも無しに、強い魔法が使えるなんて、そもそもあり得ない事だったのだ。
「ふむ。ユキサちゃん。強化魔法は良いとして、次からは再生の魔法は使わないようにしようか」
「それはできません」
「ユキサ!」
なぜだい?と聞かれてユキサがはっきり答えた。
「寄生型はともかくとして、装備型のエクソシストたちはAKUMAのウイルスを受けたら死んでしまう。私の再生魔法は、ウイルスを受けても回復できるんです。…命は1つしかありません、私は守りたい」
じ、とティエドールを見つめるユキサ。
確かにユキサの言う通りではある。
いくらウイルスを受けないように戦った所で、全てを避けられるわけじゃない。
ふぅと息を吐いてティエドールが口を開いた。