第10章 第九話 沈黙の棺
デイシャが言ったティエドールの手がかり。
バルセロナにいるという情報を元に、ユキサたちはバルセロナへ向かった。
その途中、海沿いを歩いている時、デイシャが自らの過去を話し始める。
元々雑貨屋だったデイシャの家。
母と父、そして弟が2人と妹が1人。
その家で毎日は同じ事の繰り返しで、デイシャにとって暇で仕方がなかった。
そんな時、ティエドール元帥と出会ったのだ。
「あのおっさん、突然オレに話しかけてきたと思ったらAKUMAとかエクソシストとか言い出してさ」
最初は宗教か何かかと思って、無視を決め込んでいた。
けれどそのうち、町にAKUMAが襲ってきて、ティエドールの戦いを見た。
適合者じゃなければ戦えない。
適合者に選ばれたデイシャは戦える。
悩み、父の言葉にも押されて、結果エクソシストになったのだという。
「いけすかないやつだけど、オレを見つけてくれた事だけは感謝してるジャン。…ま、人使いは荒いけどな!」
デイシャがイノセンスを発動する。
話を聞いていた4人もそれぞれの武器を構えた。
「シュート!!」
デイシャが蹴った鈴が、AKUMAを貫通する。
同時に辺りに響く超音波。
「なるほど、超音波でAKUMAを内部から破壊するのか…」
「デイシャ、強い…」
僕たちも負けていられないね、と不二が走った。
「それにしても…数が多い」
1人、空中戦をしていたユキサは思った。
今まで戦ってきたAKUMAたちの比ではない数。
それは、バルセロナに向かうにつれて多くなっているようだった。
ふと、デイシャの背後に立つAKUMAの存在に気づいた。