第9章 第八話 魔女の棲む村
「最低限の衣食住を与える代わりに、村人たちから恐れられ、忌み嫌われる存在。つまり魔女になる。魔女がいれば、村に訪れる災厄も全て魔女が引き受ける」
そうすれば村は平和でいられる、それが魔女の伝説だった。
その言葉に彩音が酷いと口を押さえた。
「しかし一ヶ月前、その老婆が死んだんです」
「…代わりが、必要になったんですね」
ユキサが言うと、ソフィアはこくりと頷いた。
「信心深い村人は魔女が必要だと考え、選び出した。…アンジェラを。私の妹を」
「そんな…」
「私の双子の妹、アンジェラは私と違って体が弱かった」
ミッテルバルトでアンジェラのために仕事をしていたソフィア。
その間に村では、アンジェラが魔女に選ばれていた。
「村の決定に、父は逆らえなかった。病弱なアンジェラはあの小屋にたった一人で住まわされた。アンジェラはあっという間に衰弱して…そして、小屋に閉じ込められてからたった10日で」
―――――私は、死んだの。
「私…?」
「ソフィアが帰ってきたのは…私が死んだ、翌日だった」
私の死体は、小屋のベッドに放置されたままだった。
その言葉に、4人は身構える。
「そしてあなたは…千年伯爵に会ったのね」
そうよ、とソフィアが不気味な声で呟く。
千年伯爵の誘いに乗ってしまったソフィア。
AKUMAとして蘇ったアンジェラに、すべてを捧げた。
もう絶対に離さない、二度とアンジェラを1人にしない。
「死んだ私を、私が蘇らせた。そして、私は私に命を授けた。私は、私を殺して再び私になったのよ」
ソフィアとアンジェラ、2人の魂が混じり合って出来たAKUMA。
不二と彩音がイノセンスを発動する。
「そして、村人さえも…」
神田が呟くと同時に、ふらふらと村人たちが4人を取り囲んだ。
「村人全員…AKUMAに!?」
「そうよ。伝説を現実にしてやったわ」
父親は最後までこの村を見届ける役目があったのに逃げようとした。
死んだのは自業自得だ、と言ったソフィアの言葉は冷めたものだった。
「話は…それだけか」
神田が六幻を抜く。
「えぇ、それだけよ。さようなら、エクソシスト様たち…」
バッとソフィアが後ろへ飛んだ。
村人がAKUMAへと変形していく。