第8章 第七話 終末への幕明け
カツカツと廊下を歩く靴音が響く。
そのまま大きな音を立てて部屋へ入ってきたのはコムイだった。
「元帥!!」
全員が静かに視線を逸した。
体に包帯を巻きながら椅子に座るイエーガー。
一命を取り留めたかのように見えるその姿は、中身がボロボロだった。
心も…。…人として無くてはならない【臓器】も。
♪千年公は、探してる
大事なハート、探してる
私はハズレ、次は誰
大事なハート、探してる♪
「ハート…?」
突然イエーガーが口ずさんだ歌を聞きながら、彩音が呟いた。
コムイが頷く。
「我々の探しているイノセンスの中に、心臓とも呼ぶべき、核のイノセンスがあるんだよ」
千年伯爵も探しているというそのイノセンスは。
強大な力を秘めており、教団側もそれを懸命に探している。
既に誰かが持っている可能性もあると言われており、それで強い力を持つ元帥が狙われたのでは、という事だった。
「さすがの元帥と言えども、AKUMAとノアの一族両方に攻められたら不利だ。そこで我々は、各地に散らばっているエクソシストたちを集結させ、他の4人の元帥の護衛に向かわせる事にした」
アレンはラビと共にクロスの所へ。
あとでリナリー、クロウリー、ミランダも合流する予定とのこと。
「彩音ちゃんと不二くんは、ユキサちゃんと神田くんと合流して、ティエドール元帥の元へ」
「わかりました!」
コムイの言葉に力強く返事を返した彩音の様子を、不二がじっと見つめていた。
「うぅ…ん…」
もぞもぞと動いて、ユキサはゆっくり目を開いた。
あれ?いつの間に寝てたんだっけ?
未だ目覚めきってない頭をフル回転させて記憶を掘り起こす。