第8章 第七話 終末への幕明け
カツカツと食堂を去っていく神田とユキサを見ながら、周囲は呆気にとられていたがはっと我に返る。
「お、おいおいおい!神田が酔ったユキサを連れて行ったぞ!?」
「おい誰か追いかけろよ!!」
「待て、殺されるって!命が幾つあっても足りねぇ!」
ギャーギャーと騒ぎ始める団員たち。
「…周助。ちょっと聞きたい事あるんだけど」
「なにかな?」
ニコニコと神田とユキサを見送っていた不二に違和感を覚えた彩音。
未だに楽しそうにしている不二に、彩音が口を開く。
「スコッチ。ユキサの近くの置いたのは周助でしょ?」
「どうしてそう思ったの?」
「なんとなく。周助、なんだか神田が来るのを分かってたみたいだから」
「まぁ…何があったかは分からないけど、荒療治でなんとかなるかなって」
―――――2人のぎこちない空気をなんとかしたかった。
まさかユキサが脱ごうとするとは思わなかったけれど。
多少飲ませて神田の反応を見るはずだったのだが。
くすりと笑った不二は、2人が消えた先を見つめていた。
やりすぎだと彩音は不二に苦笑いをしていた。
「部屋は何処だ」
「………あるけるからおろして」
神田の問いに、答えになってない返事を返すユキサ。
先程まで場所も考えずに脱ごうとしてユキサを当然神田は降ろすはずもなく。
小さく舌打ちをした神田は、歩き始める。
「おろして」
「うるせぇ」
険悪なムード。
たまたま近くを通りかかった団員がひぇ…と縮こまっていた。
程なくして、神田が部屋の扉を開けた。
何処の部屋だろうと考える間もなく、ベッドの上に無造作に投げられるユキサ。
「らんぼう」
投げられたうつ伏せの体勢のまま呟くと、ふわりと香るその匂い。
…神田の、匂い…