第7章 第六話 千年の剣士
もう戦い続ける意味はない。
そう諭した所で、ビットリオは怯まなかった。
サンドラ姫は生きている、自分はサンドラ姫のために戦い続けると。
やっぱりダメか、と不二はグングニルを構える。
「無理は、しないでね」
「大丈夫。彩音はAKUMAの警戒と、クラウディアさんをお願い」
ス、と不二が目を細めた。
そして大きく飛ぶと、ビットリオへと槍を振り下ろした。
闘技場の一角で、ビットリオと不二の戦いを見ているクラウディアに、彩音が近付く。
「クラウディアさん、ビットリオは、あなたをサンドラ姫だと思いこんでいます。…ビットリオを止めて下さい!」
このままずっと、ここで戦わせる気ですか!?
そう問えば、クラウディアはぽつりと呟いた。
「それでもいい…。彼は、私を救ってくれた」
―――――何一つ決められない、囚われの身のあの生活から。
最初は怖かった、けれどビットリオはいつも報告するだけで帰っていく。
「だけどあの夜、彼は初めて私に聞いてくれたわ」
何故、泣いておられるのですか?
父親の言いなりで結婚なんて、やはり嫌だったのだ。
そうして、ビットリオはクラウディアを逃した。
「でも、ビットリオと静かに暮らす事は無理だよ。…あなたも分かっているはず」
ここ数日で来るAKUMAの存在。
来るたびに戦うビットリオ。
彩音の言葉にクラウディアは俯いた。
と、大きな衝撃音がした。
「周助!」
倒れ込んだ不二に、ビットリオの大剣が迫る。
ここまでか、と不二が諦めかけた時。
「あんな事を言っておいて、この程度か!?」
ビットリオへ、剣撃が走る。
すんででかわしたビットリオへ、神田が六幻を構えた。
「神田…」
「不二、大丈夫?」
ヒール、とユキサの声と同時に、不二の体は暖かな光に包まれた。
「ありがとう、ユキサ」
「ううん、あとは神田に任せて不二は下がってて」